「メインクーンって、どんな性格?」
――その子によるし、その日による。
……最初にそう答えてしまったら、この記事が終わってしまいますね(笑)。
一般的にメインクーンは、穏やかで優しい、人懐っこい、賢いなどと紹介されることの多い猫種です。「ジェントルジャイアント(Gentle Giant/穏やかな巨人)」という愛称を目にしたことがある方もいるかもしれません。
長年メインクーンと暮らし、繁殖・子育てを見てきた私も、「確かにそういう子はいるな」と思います。PureJewelにも、キャットショーや慣れない環境、シャンプーモデルとして参加するときなどに、比較的落ち着いて対応できる、いわば「優等生タイプ」の子はいます。
でも、それをすべてのメインクーンの標準仕様にはできません。甘えん坊な子にも、一人でいたい時間があります。人が好きでも、抱っこは好きではない子もいます。昨日は平気だったことを、今日は「それは嫌です」と言うことだってあります。
だから私は、メインクーンについて一般的な情報を見るときも、
「一般的にはこうなんだって。で、あなたはどうなの?」
くらいに考えています。一般的な情報は、私も参考にします。ただ、その情報をそのまま目の前の一匹に当てはめるかどうかは、また別の話です。
長くメインクーンと暮らしていても、猫から教えてもらうことはまだまだあります。
この記事でいう「性格」について
この記事では読みやすさのために「性格」という言葉を使っています。ただ、その猫がもともと持っている傾向と、成長や経験、周囲との関係、そのときの環境や状態によって見える行動は、まったく同じものではありません。
「その日による」というのも、猫の性格そのものが毎日別物になる、という意味ではありません。同じ猫でも、そのときの状況によって見せる姿は違う。
この記事では、そんな違いも含めながら「メインクーンの性格」について考えていきます。
メインクーンは甘えん坊で人懐っこい?
メインクーンは、人懐っこく甘えん坊な猫として紹介されることの多い猫種です。実際、PureJewelにも人との関わりを好む子はたくさんいます。
「人が好き」
「人のそばにいたい」
「触られるのが好き」
「膝に乗るのが好き」
「抱っこが好き」
これは全部同じではありません。
自分から積極的に近づいてくるわけではないのに、目が合っただけでゴロゴロ喉を鳴らす子もいます。そばにはいたい。でもベタベタはしない。
そんな不器用な甘え方をする子を見ると、
「自分。不器用なんで。」
なんて台詞が似合いそうだなと思うこともあります(笑)。
それに、どんなに甘えん坊な猫でも24時間甘えん坊は無理です。まず、猫は寝る時間も長いですし(笑)。「甘えん坊」という一つの言葉だけで、その猫の一日全部を説明することはできません。
メインクーンは抱っこ好き?
抱っこが好きなメインクーンもいます。でも、メインクーンだから抱っこ好き、とは言い切れません。
人のそばにいるのが好きでも、抱き上げられることは苦手な子もいます。逆に、自分からはそれほど積極的に来ないのに、抱っこされると意外とそのままくつろいでいる子もいます。
だから、
「抱っこ好きな子だったら嬉しい。でも、嫌いならその子に合わせます」
という希望なら、私はまったく不思議には思いません。
ただ、「絶対に抱っこ好きな子が欲しいです」となると――
ぬいぐるみが一番確実かもしれません(笑)。
猫には猫の都合があります。希望を持つことと、その猫に「必ずこうであってほしい」という仕様書をつけることは、少し違うと思っています。
メインクーンは賢い?犬みたいな性格?
メインクーンは「賢い」「犬のような猫」と表現されることもあります。人の後をついて歩いたり、人とのやり取りを楽しんだりする姿から、そう感じる方もいるのでしょう。
ただ、「賢い」って何をもって賢いんでしょう(笑)。
人の言うことをよく理解して行動する子。新しいことをすぐ覚える子。自分で面白い遊び方を見つける子。
PureJewelでは、トンネルなのに中に入らず、上から潰してガサガサ遊ぶ子がいたり、猫じゃらしを人と遊ばず自分で持っていったりする子もいます。それを見ていた後輩猫が、似た遊び方を始めることもあります。
「先輩の真似してる?」と思うことはありますが、日常の観察だけで猫が意図的に模倣しているとまでは言えません。ただ、猫同士の世界の中でもいろいろ経験しているんだろうな、とは感じます。
そんな子たちを見ていると、何でも「賢い」「活発」「好奇心旺盛」と分類しなくても、
「君、毎日楽しそうだね(笑)」
くらいでいいこともあります。
オスとメスで性格は違う?
「メインクーンのオスは甘えん坊で、メスはクール」そんな説明を目にすることがあります。
猫の行動について性別による傾向が研究されることはありますし、長年一緒にいると「こういう傾向はあるのかな」と感じることもあります。私自身、女の子は要領のいい子が多いような気がすることはあります。
でも、もちろん甘えん坊な女の子もいます。同じ性別でも、性格はそれぞれです。
人間の兄弟姉妹だって、同じ親から生まれて同じ家で育っても全員同じ性格にはなりません。猫も同じように、親子や兄弟で「似ているな」と感じる行動が出ることはあります。
ただ、それが遺伝なのか、周囲を見て覚えたのか、同じ環境で暮らしている影響なのか。日常の観察だけで簡単に答えを決めることはできません。
「男の子だから甘えん坊になる」と考えることと、「この男の子は、今こんなふうに甘えています」と見ることは、似ているようで違います。気分もある生き物の性格を、性別だけで決めるのはなかなか難しいものです。
メインクーンは飼いやすい性格?
メインクーンは穏やかで人と暮らしやすい猫として紹介されることがあり、実際に一緒に暮らしやすいと感じる子もいます。
「性格が穏やか」と、「飼育そのものが簡単」は別の話です。
メインクーンは大型の長毛猫です。身体の大きさ、被毛のお手入れ、生活するスペースや運動環境など、性格以外にも一緒に暮らす前に考えておきたいことがあります。
また、どれだけ一般的に穏やかな猫種と言われていても、その子自身が苦手なことまでなくなるわけではありません。
「メインクーンは飼いやすいですか?」という質問には、性格だけで一言のYES・NOをつけるより、「どんな暮らしを想像しているのか」まで一緒に考えた方がいいと思っています。
子猫の性格は、いつ決まる?
「この子は大人しいですか?」
「甘えん坊になりますか?」
「今おっとりしているなら、大人になってもおっとりしていますか?」
子猫を迎えるときには、気になるところだと思います。
でも私は、子猫について未来まで含めて、「この子はこういう性格です」と決めるより、
「今はこんな様子です」
とお伝えすることを大切にしています。
ほんの少し言い方が違うだけですが、私はこの違いを大切にしています。「この子はこういう猫」と決めるのではなく、「今、この子はこうしています」と、実際に見えている姿をお伝えするためです。
子猫の時期を考えてみると、ものすごいんです。
生まれて。
初乳を飲んで。
母乳を飲んで。
最初はママ猫に排泄を助けてもらっていた子が、自分で排泄するようになって。
身体の使い方を覚えて。
離乳食を食べ始めて。
食べ物を覚えて。
歩いて、走って、遊びを覚えて。
ママ猫や兄弟、周囲の猫との関係を経験して。
人との生活も経験していく。
めちゃくちゃハードスケジュールです(笑)。
子猫期の経験はもちろん大切です。ただ、成長途中の一場面だけを見て、「この子は臆病」「この子は活発」「この子は甘えん坊」と、その先まで固定してしまう必要はないと思っています。
だからPureJewelでは、「今は少し慎重に様子を見ながら出てくる子です」「今は人のそばにいることが多いです」「今のところ、こんな遊び方をしています」という伝え方をします。
今見えている姿ならお話しできます。でも、その子がこれから経験することまで含めた未来の性格は、まだ誰にも分かりません。
子猫を育てているのは、人間だけじゃない
子猫を育てているのはブリーダーだけではありません。子猫にとって、本来のお母さんはママ猫です。
ママ猫との関係があり、兄弟との関係があり、周囲の猫たちとの関係があります。
人間側ができるのは、健康管理をして、安全で清潔な環境を整え、必要な補助をし、人と暮らしていくうえで必要になりそうな経験を無理のない範囲で用意すること。
PureJewelでも生活音、足先に触れること、爪切りにつながる経験、シャンプーなどを、その子の様子を見ながら経験してもらいます。
でも、「経験したことがある」と、「これから一生平気」も同じではありません。
猫同士の関係も同じです。先輩猫の行動を見ているうちに、後輩が似たことを始める。末っ子だった子に後輩ができれば、今度はその子が先輩になる。
「子分できたのか!」
なんて思うこともあります(笑)。
人間との関係だけではなく、猫同士の世界の中でも、その子は経験を積んでいきます。
「その子による」だけじゃなく、「その日による」
同じ猫でも、毎日まったく同じではありません。昨日は平気だったブラッシングを、今日は嫌がる。いつも人のそばにいる子が、今日は一匹で寝ている。「ここを触るのはいいけど、今日はそこは嫌」という日もあります。
季節や室温、生活リズム、周囲の環境、同居猫との関係など、猫を取り巻くものも毎日まったく同じではありません。
人間なら、「雨続きだからねー」「今日はちょっと疲れてるんだよね」なんて事情を言葉にできます。猫はそうはいきません。
だから、いつもと少し違う行動をしたときに、「この子は気難しい」「わがまま」「神経質」と性格の一言だけで片付ける前に、
「今日はどうしたのかな?」
と考えてみる。私はその方が、目の前の猫を見やすいと思っています。
変化を全部なくすことはできません。人間側ができるのは、猫にはその変化を人間と同じように説明して理解してもらうことはできない、と理解しておくことなのだと思います。
お迎え後に性格が変わったように見えることもある
猫舎では平気だったことを、新しい家では慎重になる子もいます。反対に、猫舎にいた頃よりずっと甘えん坊になる子もいます。
新しい家族との暮らしの中で、猫舎にいた頃には見られなかった世話好きな一面を見せるようになった子もいます。
そんな話をオーナーさんから聞くと、
「そういうふうに育つのか(笑)」
と、私自身が教えてもらうことがあります。
だから、お迎え後に違う姿が出たからといって、「猫舎で聞いていた性格が嘘だった」とも、「新しい家で何か失敗した」とも、単純には考えません。
猫舎にいたときには、その姿だった。そして今は、新しい環境、新しい家族、新しい関係の中で、別の姿も見えている。それもまた成長なのだと思います。
猫って、今見えている性格の反対側みたいなものまで持っているんじゃないかな。そんなふうに感じることさえあります。
これは研究結果ではなく、長年猫たちを見てきた私個人の感覚ですけれど(笑)。
「ネットにはこう書いてあったのに」と不安にならなくていい
メインクーンについて検索すれば、「甘えん坊」「人懐っこい」「穏やか」「賢い」「犬のような猫」など、いろいろな説明が出てきます。
それを参考にすること自体は、まったく悪いことではありません。私だってネットで調べますし、AIを使うこともあります。専門的なことなら資料を調べたり、その分野の専門家を頼ったりもします。
「こういう情報もあるんだな」と、自分の引き出しを増やすことは大切です。
ただ、「一般的にはこう言われている」と、「目の前のこの子も必ずそうである」は別です。
「メインクーンは甘えん坊と書いてあったのに、うちの子はあまり膝に来ない」「抱っこ好きと聞いていたのに、降りたがる」
そんなとき、「うちの子だけ違う?」「懐いていないのかな?」「育て方が悪かった?」「これで合ってる?」と不安になる方もいるかもしれません。
でも、一般論と違うからといって、その子について何かがおかしいと決まるわけではありません。情報は、その子を見るための引き出しの一つ。
「一般的にはこうなんだって。で、あなたはどうなの?」
それくらいの距離感が、私は好きです。
ブリーダーは予言者じゃない。
ブリーダーは、その子のこれまでについて話すことができます。猫舎ではどんなふうに過ごしているか。今は人とどう関わっているか。他の猫とはどんな様子か。どんな遊び方をしているか。今のところ、抱っこされたときにどうしているか。
そこまでは、実際に見ているからお話しできます。
でも、新しいご家族との暮らしの中で、その子がこれからどんな一面を見せるのか。そこまで未来を知ることはできません。
だから、「ずっと甘えん坊です」「必ず抱っこ好きになります」「先住猫と必ず仲良くできます」とは言えません。
未来を保証する代わりに、今見えている姿をできるだけきちんと伝える。
私はその方が大切だと思っています。
そして、長くブリーダーをしていれば何でも分かるようになるわけでもありません。
巣立った子のオーナーさんから、「こんなことするようになりました」「猫舎にいた頃とは全然違います(笑)」と教えてもらって、「へぇ、そういうふうに育つのか」とこちらが学ぶこともあります。
十人十色と言いますが、猫も同じ。長く一緒にいるから、全部分かるようになるわけではありません。
「お引き渡し」より、「ここから先を託す」
もちろん、ブリーダーから子猫を迎えていただくことは販売です。そこを違う言葉に置き換えるつもりはありません。
ただ、私自身の感覚としては、「お引き渡し」というより、
「ここまでは私が見てきました。ここから先をお願いします」
と、託すことに近いのかもしれません。
子猫がブリーダーと過ごす時間は、その子の一生の最初の部分です。これから先、新しいご家族と過ごす時間の方がずっと長くなります。
その長い時間の中で、猫舎では見たことのなかった好きなものが増えるかもしれません。新しい苦手なものが分かるかもしれません。思いもしなかった甘え方をするようになるかもしれません。
だから私は、完成した「性格の商品」をお渡しするようには考えていません。
今ここにいる、この子を見て。ここから先を、そのご家族に託します。
そんなことも含めて、家族になっていく
たくさんの猫の中から、「この子がいい」と選ぶ出会いがあります。
逆に、長くたくさんの出会いを見ていると、「これ、この子の方がこの人を選んでない?」と思うような出会いもあります。
もちろん、これは科学的な話ではありません(笑)。
でも、そんなふうに感じるご縁はあります。
家族になるというのは、最初からその猫のすべてを理解していることではないと思います。
一緒に暮らしながら、「これは好きなんだ」「これは嫌なんだ」「今日は一人でいたいのね」「え、そんなことするの?」と知っていく。猫も人との暮らしを知っていく。
多頭飼育なら、猫同士の関係も少しずつ変わっていきます。昨日まで末っ子だった子が先輩になることもあります。新しい関係ができれば、今まで見えていなかった一面が出ることもあります。
そんなことも全部含めて、家族になっていくんじゃないかなと思っています。
この子は、この子。
長年メインクーンと暮らしていて、「どうしてメインクーンが好きなんだろう?」と考えることがあります。
でも結局、「メインクーンだから、この子が好き」だけではないんですよね。
この子が好きなんです(笑)。
性格も、行動も、好きなことも、苦手なことも、ずっと同じとは限りません。これからどう育つのか楽しみな気持ちもあります。
でも子猫を見ていると、「無事に育ってください」と心配することだってあります。
心配という言葉だけ聞くと暗く感じるかもしれません。でも、小さな変化まで気になるのは、それだけ大切だからなのだと思います。
一般的なメインクーンの性格を知ることは、その子を知る入口になります。「甘えん坊な猫がいいな」「穏やかな子だったら嬉しいな」そんな希望があってもいいと思います。
そして実際に家族になったら、「あ、この子はこうなんだ」と、一つずつ知っていく。
猫種という大きな枠を知ったあとで、最後に見るのは一匹の猫です。
この子は、この子。
では、もう一度。
「メインクーンって、どんな性格?」
――その子によるし、その日による。
たぶん私は、これから先もそう答えると思います(笑)。